焼酎・泡盛 用語集
焼酎・泡盛にまつわる専門用語を、カテゴリ別に解説します。醸造・蒸留・泡盛・飲み方・原料の用語を網羅。
醸造用語
- 麹(こうじ) Koji
- 蒸した穀物(米または麦)に麹菌を繁殖させたもの。麹菌が生み出す酵素(アミラーゼ、プロテアーゼなど)がデンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する。焼酎造りの最も重要な要素。
- 麹菌(こうじきん) Aspergillus
- アスペルギルス属のカビの総称。焼酎では黒麹菌・白麹菌・黄麹菌の3種が使われる。糖化酵素とクエン酸を生成し、発酵の基盤を作る。
- 黒麹(くろこうじ) Kuro Koji / Black Koji
- Aspergillus luchuensis。クエン酸を大量に生成し、雑菌汚染を防ぐ。コクと力強さのある味わいの焼酎になる。泡盛には必ず黒麹を使用。沖縄で発見された菌。
- 白麹(しろこうじ) Shiro Koji / White Koji
- Aspergillus luchuensis var. kawachii。1918年に河内源一郎氏が黒麹の突然変異体として発見。クエン酸生成力は黒麹と同等だが、軽やかでフルーティーな焼酎に仕上がる。現在の本土焼酎の主流。
- 黄麹(きこうじ) Ki Koji / Yellow Koji
- Aspergillus oryzae。日本酒造りに広く使われる麹菌。クエン酸の生成が少ないため温度管理が難しいが、華やかな香りの焼酎が生まれる。一部の芋焼酎で使用。
- 製麹(せいきく) Seikiku
- 麹を造る工程。蒸した米(または麦)に麹菌の胞子を振りかけ、約40〜48時間かけて温度・湿度を管理しながら麹菌を繁殖させる。
- 一次仕込み(いちじしこみ) Primary Fermentation
- 麹に水と酵母を加えて発酵させ、酒母(一次もろみ)を造る工程。約5〜8日間。酵母を十分に増殖させることが目的。
- 二次仕込み(にじしこみ) Secondary Fermentation
- 一次もろみに主原料(芋・麦・米・黒糖など)と水を加えて本発酵させる工程。約8〜14日間。この段階で焼酎の味わいの骨格が決まる。
- もろみ Moromi
- 仕込みによってできた発酵中の液体。糖化とアルコール発酵が同時に進行する。蒸留前のもろみのアルコール度数は約14〜18%。
- 酒母(しゅぼ) Shubo / Yeast Starter
- 一次仕込みで造られる、酵母が大量に増殖した状態のもろみ。「一次もろみ」とも呼ばれる。二次仕込みの基盤となる。
- 酵母(こうぼ) Yeast
- 糖をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物。焼酎用酵母にはさまざまな種類があり、使用する酵母によって香りの特性が異なる。
- クエン酸 Citric Acid
- 黒麹・白麹が大量に生成する有機酸。もろみを酸性に保ち、雑菌の繁殖を抑制する。高温多湿の九州・沖縄での焼酎造りに不可欠な防御機構。
- 糖化(とうか) Saccharification
- 麹菌の酵素(アミラーゼ)がデンプンをブドウ糖に分解する過程。焼酎では糖化と発酵が同時に進行する「並行複発酵」が行われる。
- 並行複発酵(へいこうふくはっこう) Multiple Parallel Fermentation
- 糖化(デンプン→糖)とアルコール発酵(糖→アルコール)が同時に進行する発酵形式。日本酒や焼酎に特有の醸造技術で、高いアルコール度数を生み出すことができる。
- 甕仕込み(かめじこみ) Kame-jikomi
- 陶器の甕(かめ)の中で仕込みを行う伝統的な方法。甕の遠赤外線効果や微細な気孔による微量の通気が、まろやかな味わいを生むとされる。
蒸留用語
- 蒸留(じょうりゅう) Distillation
- もろみを加熱してアルコールと香味成分を蒸気として取り出し、冷却して液体に戻す工程。焼酎のアルコール度数を高め、原料の風味を凝縮する。
- 単式蒸留器(たんしきじょうりゅうき) Pot Still
- 一回の蒸留ごとにもろみを入れ替える蒸留器。本格焼酎(乙類)はこの蒸留器を使う。原料由来の風味成分が豊かに残る。ポットスチルとも。
- 連続式蒸留器(れんぞくしきじょうりゅうき) Column Still
- 連続的にもろみを供給して蒸留する装置。高純度のアルコールが得られ、甲類焼酎の製造に使用。原料の風味はほとんど残らない。
- 常圧蒸留(じょうあつじょうりゅう) Atmospheric Distillation
- 大気圧(1気圧)下で行う伝統的な蒸留法。沸点は約90〜100℃。高温で蒸留するため、フーゼル油などの高沸点成分も抽出され、コクのある力強い味わいになる。
- 減圧蒸留(げんあつじょうりゅう) Vacuum Distillation
- 蒸留器内の気圧を0.1〜0.3気圧に下げ、沸点を40〜50℃に低下させて蒸留する方法。1970年代に大分県で普及。雑味成分の抽出が抑えられ、すっきりフルーティーな味わいになる。
- 原酒(げんしゅ) Genshu / Cask Strength
- 蒸留後に加水調整をしていない焼酎。アルコール度数は36〜44度程度。原料の風味がダイレクトに感じられる力強い味わい。
- 初垂れ(はなだれ) Hanatare / First Distillate
- 蒸留の最初に出てくる液体。最もアルコール度数が高く(60度以上)、華やかな香りを持つ。与那国島の「花酒」はこの部分。
- 本垂れ(ほんだれ) Hondare / Heart
- 蒸留の中盤に出てくる液体。最も品質が安定した部分で、製品の主体となる。
- 末垂れ(すえだれ) Suedare / Tails
- 蒸留の終盤に出てくる液体。アルコール度数が下がり、雑味成分が増える。通常は次の蒸留に回される。
- フーゼル油 Fusel Oil
- 発酵中に酵母が生成する高級アルコール(イソアミルアルコールなど)の総称。少量は焼酎のコクと風味に寄与するが、多すぎると雑味になる。常圧蒸留で多く抽出される。
- 熟成(じゅくせい) Aging / Maturation
- 蒸留した原酒を一定期間貯蔵し、味わいを落ち着かせる工程。甕・樽・タンクなど容器の種類により異なる変化が生じる。
- 甕貯蔵(かめちょぞう) Kame Chozo / Pot Storage
- 陶器の甕で原酒を熟成させる伝統的な方法。甕の微細な気孔を通じた緩やかな酸化熟成と、甕由来のミネラル溶出によりまろやかな味わいに。
- 樽貯蔵(たるちょぞう) Taru Chozo / Barrel Aging
- オーク樽で原酒を熟成させる方法。樽材からバニリンやタンニンが溶出し、琥珀色に色づく。バニラやスパイスの香りが加わる。
泡盛用語
- 泡盛(あわもり) Awamori
- 沖縄県で600年以上造られている蒸留酒。タイ産インディカ米と黒麹菌を用い、全量麹仕込みで造る。法律上は単式蒸留焼酎に分類。GI「琉球」指定。
- 古酒(くーす/こしゅ) Kusu / Koshu
- 3年以上熟成させた泡盛。年月とともにまろやかさと深みが増し、バニラやナッツのような複雑な香りが生まれる。2015年の表示改正で全量3年以上が条件に。
- 仕次ぎ(しつぎ) Shitsugi
- 泡盛の伝統的な古酒育成法。複数の甕を年代順に並べ、最も古い甕から飲んだ分を次に古い甕から補充し、順次若い泡盛で補う。シェリー酒のソレラシステムに類似。
- 花酒(はなざけ) Hanazake
- 与那国島のみで製造されるアルコール度数60度の泡盛。蒸留の初垂れ(はなだれ)を集めたもの。酒税法上は「スピリッツ」に分類。3酒造所のみが製造。
- 全量麹仕込み(ぜんりょうこうじじこみ) Zenryo Koji-jikomi
- 全ての米を麹にし、水と酵母を一度に加えて仕込む泡盛独自の製法。本土焼酎の二段仕込みと異なり、酵素力が強く、独特のコクと風味を生む。
- 首里三箇(しゅりさんか) Shuri Sanka
- 琉球王国時代に泡盛の製造が許可されていた首里城周辺の3つの地区(崎山・赤田・鳥堀)。王府が泡盛の品質と供給を管理するために醸造地域を限定した。
- 御酒(うさき) Usaki
- 琉球王国時代における泡盛の呼称。王府の祭祀や外交の場で用いられた格式の高い酒。中国からの冊封使をもてなす宴でも供された。
- カリー Karii
- 沖縄の乾杯の掛け声。「嘉例」と書き、「めでたい」「縁起が良い」の意。「カリーサビラ(乾杯しましょう)」と唱和する。
飲み方用語
- お湯割り(おゆわり) Oyuwari
- 焼酎をお湯で割る飲み方。焼酎6:お湯4(ロクヨン)が黄金比。お湯を先にグラスに入れ、焼酎を後から注ぐのが正しい作法。温めることで香りが立つ。
- 水割り(みずわり) Mizuwari
- 焼酎を水で割る飲み方。氷を入れて冷やして飲むことが多い。軟水がおすすめ。穏やかな味わいで食事と合わせやすい。
- 前割り(まえわり) Maewari
- 焼酎と水を事前に混ぜ合わせ、2〜3日から1週間寝かせてから飲む鹿児島の伝統的な飲み方。水と焼酎の分子が馴染み、極めてまろやかな口当たりになる。
- ロック On the Rocks
- 大きめの氷をグラスに入れ、焼酎をそのまま注ぐ飲み方。氷が溶けるにつれて味わいが変化する。
- ソーダ割り Soda-wari / Shochu Highball
- 焼酎を炭酸水で割る飲み方。焼酎1:ソーダ3〜4が目安。炭酸を逃がさないよう、混ぜるのは1回だけ。近年人気急上昇中。
- ストレート Straight / Neat
- 焼酎をそのまま飲む方法。原料と製法の個性をダイレクトに感じられる。チェイサー(水)を用意して交互に飲むのが推奨。
- 黒ぢょか(くろぢょか) Kuro-joka
- 鹿児島の伝統的な酒器。黒い平たい土瓶で、前割りの焼酎を温めて直接注ぐ。炭火や弱火でゆっくり温める。
- ロクヨン Roku-Yon (6:4)
- お湯割りの黄金比率。焼酎6に対してお湯4の割合。25度の焼酎をこの比率で割ると、約15度の飲みやすいアルコール度数になる。
原料用語
- 黄金千貫(コガネセンガン) Kogane Sengan
- 芋焼酎に最も広く使われるさつまいもの品種。白い肉質でデンプン含有量が高い。ふくよかな甘みとまろやかな味わいが特徴。名前は大量に収穫できることに由来。
- ムラサキマサリ Murasakimasari
- 赤紫色の肉質を持つさつまいも品種。アントシアニンを豊富に含む。華やかでフルーティーな香りの芋焼酎になる。「赤霧島」の原料として有名。
- ジョイホワイト Joy White
- 1994年に品種登録された焼酎専用のさつまいも品種。デンプン価が高く、すっきり軽快で柑橘系の香りを持つ焼酎になる。
- インディカ米 Indica Rice
- タイやベトナムなどで栽培される長粒種の米。粒が細長くパラパラしており、泡盛の原料として使われる。麹菌が繁殖しやすく、泡盛特有の風味を生む。
- 二条大麦(にじょうおおむぎ) Two-row Barley
- 麦焼酎の主原料として使われる大麦の品種。穂の各節に2列の粒がつく。ビール醸造にも使用される。デンプン含有量が高く、焼酎造りに適している。
- 黒砂糖(くろざとう) Kurozato / Brown Sugar
- さとうきびの搾り汁を煮詰めて作る砂糖。精製度が低く、ミネラルやビタミンが残る。黒糖焼酎の主原料。奄美群島産の黒砂糖が使われる。
- 甘藷(かんしょ) Kansho / Sweet Potato
- さつまいもの正式名称。芋焼酎の主原料。鹿児島県と宮崎県が主要産地。品種により味わいが大きく異なる。
分類・制度用語
- 本格焼酎(ほんかくしょうちゅう) Honkaku Shochu
- 単式蒸留器で蒸留した焼酎。酒税法上は「単式蒸留焼酎」。原料由来の香味が豊かに残る。芋焼酎・麦焼酎・米焼酎・黒糖焼酎・泡盛などが該当。アルコール度数45度以下。
- 甲類焼酎(こうるいしょうちゅう) Korui Shochu
- 連続式蒸留器で蒸留した焼酎。酒税法上は「連続式蒸留焼酎」。無色透明でクセがなく、チューハイやサワーのベースに使われる。アルコール度数36度未満。
- 混和焼酎(こんわしょうちゅう) Konwa Shochu
- 本格焼酎(乙類)と甲類焼酎をブレンドしたもの。本格焼酎の風味を残しつつ、飲みやすい味わいに仕上げる。
- GI(地理的表示) Geographical Indication
- 特定の産地と結びついた品質・社会的評価を持つ酒類の名称を保護する制度。焼酎・泡盛では壱岐(1995年)、球磨(1995年)、琉球(1995年)、薩摩(2005年)が指定。WTOのTRIPS協定に基づく国際保護。
- 酒税法(しゅぜいほう) Liquor Tax Act
- 日本の酒類の製造・販売・税率を定める法律。焼酎は「単式蒸留焼酎」と「連続式蒸留焼酎」に分類される。黒糖焼酎の奄美限定製造もこの法律の特例措置に基づく。
- 蒸留所(じょうりゅうしょ) Distillery
- 焼酎を製造する施設。「酒造所」「酒造」「蔵」とも呼ばれる。全国に約970の蒸留所がある。