焼酎の種類

原料の違いが生む、多彩な味わいの世界。芋・麦・米・黒糖・泡盛・そばの6大焼酎を中心に、その特徴と産地を解説します。

目次

芋焼酎 — Imo Shochu(Sweet Potato)

主要産地:鹿児島県・宮崎県 GI:薩摩(2005年指定)

芋焼酎はさつまいも(甘藷)を主原料とする焼酎で、焼酎生産量の約半分を占めます。鹿児島県と宮崎県が二大産地であり、鹿児島県だけで約120の蒸留所が芋焼酎を造っています。

原料品種と味わいの違い

使用するさつまいもの品種によって、味わいが大きく異なります。

品種名特徴味わい
黄金千貫(コガネセンガン)最も広く使われる品種。白い肉質ふくよかな甘みとまろやかさ
紫芋(ムラサキマサリ等)赤紫の肉質。アントシアニン豊富華やかでフルーティーな香り
ジョイホワイト焼酎専用品種。1994年登録すっきり軽快、柑橘系の香り
安納芋種子島原産の高糖度品種濃厚な甘みと蜜のような香り
紅はるか2010年品種登録の高糖度品種しっとりした甘みとやさしい口当たり

麹と蒸留による味の変化

黒麹仕込みはコクと力強さが際立ち、白麹仕込みは軽やかでフルーティーな仕上がりになります。常圧蒸留は原料の風味を強く残し、減圧蒸留はすっきりとした飲みやすい味わいになります。

代表的な銘柄としては、黒霧島(霧島酒造)、白波(薩摩酒造)、魔王(白玉醸造)、森伊蔵(森伊蔵酒造)、村尾(村尾酒造)などがあります。

麦焼酎 — Mugi Shochu(Barley)

主要産地:大分県・長崎県壱岐 GI:壱岐(1995年指定)

麦焼酎は大麦(主に二条大麦)を主原料とする焼酎です。芋焼酎に比べてクセが少なく、すっきりとした軽やかな飲み口が特徴で、焼酎入門者にも飲みやすいと評されます。

大分麦焼酎

大分県は麦焼酎の最大産地です。1970年代に二階堂酒造と三和酒類が減圧蒸留と麦麹(全量麦仕込み)を用いた淡麗な麦焼酎を開発し、全国的なブームを牽引しました。麦100%で仕込む「全量麦仕込み」は大分麦焼酎の大きな特徴です。代表銘柄は「いいちこ」(三和酒類)、「二階堂」(二階堂酒造)などです。

壱岐焼酎(GI壱岐)

長崎県壱岐島は麦焼酎発祥の地とされ、500年以上の歴史があります。壱岐焼酎は米麹と大麦を1:2の比率で仕込む伝統製法で造られ、米由来のコクと麦の香ばしさが調和した深い味わいが特徴です。1995年にWTOのTRIPS協定に基づくGI(地理的表示)に指定されました。島内には7つの蒸留所があります。

米焼酎 — Kome Shochu(Rice)

主要産地:熊本県球磨地方 GI:球磨(1995年指定)

米焼酎は米を原料とする焼酎で、日本酒に通じる上品な香りとまろやかな口当たりが特徴です。最大の産地は熊本県の球磨地方(人吉市・球磨郡)で、球磨川の清流と盆地特有の寒暖差が良質な米焼酎を生みます。

球磨焼酎(GI球磨)

球磨焼酎は、熊本県人吉市と球磨郡で造られる米焼酎にのみ認められた地理的表示です。500年以上の歴史を持ち、地元産の米と球磨川水系の水を使い、この地域で蒸留・瓶詰めしたものだけが「球磨焼酎」を名乗れます。現在約27の蒸留所が球磨焼酎を造っています。

常圧蒸留で造る伝統的な球磨焼酎は濃醇でコクがあり、樽貯蔵で琥珀色に色づいたものもあります。一方、減圧蒸留による軽やかなタイプも増えています。代表銘柄は「白岳」(高橋酒造)、「鳥飼」(鳥飼酒造)、「極楽」(林酒造場)などです。

黒糖焼酎 — Kokuto Shochu(Brown Sugar)

産地:鹿児島県奄美群島のみ 奄美限定の特例製造

黒糖焼酎は、さとうきびから作った黒砂糖を主原料とする焼酎です。製造が認められているのは奄美群島(奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島)に限られます。

なぜ奄美だけなのか

1953年12月25日に奄美群島が米国統治から日本に復帰した際、それまで奄美で造られていた黒糖酒を酒税法上の「焼酎」として特例的に認める措置がとられました。米麹を使用することが条件で、黒糖だけで発酵させると「スピリッツ」に分類されるため、必ず米麹で一次仕込みを行ってから二次仕込みで黒糖を加えます。

味わいの特徴

黒糖由来の甘い香りがありながら、蒸留酒のため糖分はゼロです。飲み口はすっきりと軽やかで、ほのかなコクがあります。常圧蒸留のものは黒糖の風味が豊かに残り、減圧蒸留のものはより繊細で上品な味わいになります。代表銘柄は「里の曙」(町田酒造)、「れんと」(奄美大島開運酒造)、「朝日」(朝日酒造)などです。

泡盛 — Awamori

産地:沖縄県 GI:琉球(1995年指定)

泡盛は沖縄県で600年以上造り続けられている日本最古の蒸留酒です。法律上は単式蒸留焼酎に分類されますが、その歴史・製法・文化は本土の焼酎とは明確に異なります。

泡盛の3つの特徴

1. タイ産インディカ米 — 泡盛は日本産のジャポニカ米ではなく、タイ産の砕米(インディカ米)を使います。粒が細長くパラパラしているため、麹菌が繁殖しやすく、泡盛特有の風味を生みます。

2. 黒麹菌(Aspergillus luchuensis) — 泡盛の麹は全て黒麹です。黒麹はクエン酸を大量に生成するため、高温多湿の沖縄でも雑菌の繁殖を防ぎ、安定した発酵が可能です。

3. 全量麹仕込み — 本土の焼酎は米麹で一次仕込みをした後、主原料を加えて二次仕込みをしますが、泡盛は全ての米を麹にして一度に仕込みます。これを「全量麹仕込み」と呼びます。

3年以上熟成させた泡盛は「古酒(クース)」と呼ばれ、まろやかで深い味わいになります。沖縄県内には約48の酒造所があります。詳しくは泡盛の専門ページをご覧ください。

そば焼酎 — Soba Shochu(Buckwheat)

発祥:宮崎県五ヶ瀬町 1973年誕生

そば焼酎は、蕎麦(そば)の実を主原料とする焼酎です。1973年(昭和48年)に宮崎県五ヶ瀬町の雲海酒造が世界で初めて蕎麦を原料とした焼酎「雲海」を開発・発売しました。それ以前には蕎麦を蒸留酒の原料とする例は日本になく、焼酎の歴史の中では比較的新しい種類です。

すっきりとした飲み口と蕎麦特有の香ばしい風味が特徴で、クセが少ないため焼酎初心者にも親しみやすい味わいです。蕎麦料理はもちろん、和食全般と合わせやすいです。宮崎県のほか、長野県や北海道など蕎麦の産地でも造られています。

その他の焼酎

栗焼酎

栗を主原料とする焼酎で、まろやかな甘みと上品な香りが特徴です。愛媛県や宮崎県が主な産地です。栗の風味をいかすため、減圧蒸留で造られることが多いです。

粕取り焼酎(かすとり焼酎)

日本酒を搾った後に残る酒粕を原料とする焼酎です。日本酒の産地である新潟県や福岡県で伝統的に造られてきました。吟醸酒の酒粕を使ったものは、華やかな吟醸香が楽しめます。

ごま焼酎

ごま(胡麻)を原料に含む焼酎で、ごま特有の香ばしさとコクが特徴です。福岡県の紅乙女酒造が1978年に世界初のごま焼酎「紅乙女」を発売しました。麦や米と併用してごまを原料に加えています。

焼酎の種類別 比較表

種類主原料主要産地味わいの傾向GI指定
芋焼酎さつまいも鹿児島・宮崎甘い香り、ふくよかなコク薩摩
麦焼酎大麦大分・長崎軽やか、すっきり壱岐
米焼酎熊本(球磨)上品、まろやか球磨
黒糖焼酎黒砂糖+米麹奄美群島甘い香り、すっきり-
泡盛タイ米(インディカ米)沖縄コク、熟成で深み琉球
そば焼酎蕎麦宮崎・長野香ばしくすっきり-
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